誰かに会うといっても、さっきの観覧車のお兄さんは川と何の関係もない。川に触るといっても、堤防には柵があって川っぷちまで降りられない。川の恵を食べるといっても、昼に食べたのはカレーライスだ!…昇ちゃんは三つの鉄則を一つも実行していなかった。
大ピンチなのに力が出ない。三つの鉄則が重く肩にのしかかる。とぼとぼと堤防を引き返してきた昇ちゃんは荒川を眺めて溜息を漏らした。
するとどうだろう。昇ちゃんの目の前をドドドドッとエンジンを鳴らして小さな漁船が通り過ぎたのだ。東京湾の方から川を少しさかのぼって、漁船は水門から運河へ入っていった。
昇ちゃんはその行く先目がけて走り出した。誰かに会えるかもしれない。雨に濡れながら、昇ちゃんはワクワクした。
漁師さんに会う
小さな漁船は船着場に停まっていた。船上では漁師さんが何やら作業している。
見れば船着場には『葛西漁業協同組合』と書いた漁船が何隻かある。
どれも小さな船だ。昇ちゃんは漁師さんに近づいた。
昇ちゃん: |
こんにちは。ぼくはいけいけ川っぷち団の近藤といいます |
漁師さん: |
はぁ? |
昇ちゃん: |
いけいけ川・・・。 |
漁師さん: |
誰でもいいけど何しているんだい?こんな雨の中。 |
昇ちゃん: |
荒川を探検してるんですけど・・・。 |
漁師さん: |
ほう、探検かい。そりゃ大変だね。 |
昇ちゃん: |
はい、そりゃもう色々あって・・いや、あの、漁師さんも大変ですね。 |
漁師さん: |
大変なんかじゃないよ。毎日やってんだから。 |
昇ちゃん: |
はい。そりゃそうですよね。ところで今何を? |
漁師さん: |
網を仕掛けてきたの。あした上げる網を。 |
昇ちゃん: |
あしたって、あしたは台風ですよ?! |
漁師さん: |
誰がそんなこと言った? |
昇ちゃん: |
天気予報 |
漁師さん: |
そんなのよりオレの方が当たるんだから。あしたは台風はまだ来ねぇ。 |
昇ちゃん: |
でも・・・ |
漁師さん: |
来ねぇって言ったら来ねぇの! |
昇ちゃん: |
はい、来ません。台風来ません! |
漁師さん: |
何ならあしたの朝一緒に出かけっか? |
昇ちゃん: |
ど、どこへでしょう。 |
漁師さん: |
海だよ。東京湾。 |
昇ちゃん: |
台風は・・・ |
漁師さん: |
来ねぇの!! |
というわけで昇ちゃんはたまたま出会った漁師さんと翌日の漁に出かけることになった。
漁師さんの名は渡辺さん。73歳。荒川の河口と東京湾で子どものときから漁をしている。朝5時集合。台風接近中。果たしてどうなることやら…。
|

ひたすら歩く

ドドドー!という轟音とともに船がやってきた

船がたくさん停まっています

運命の出会い!漁師の渡辺さん |