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【2004年11月30日 緊急特集号】
 2004年11月19日昼2時。団長に一本の電話が入った。あらかわWEB探検隊の撮影班からだ。撮影班は荒川の伝統的な漁法を撮影して回っている。『いけいけ川っぷち団』が“行き当たりばったりの出たとこ勝負集団”だとすれば、撮影班は“アカデミックなスマート集団”。何をやっても格好いい。そんな撮影班に我が団長は目茶目茶ライバル心を燃やしている。
謎の電話

撮 影 班: モシモシ、急ぎの用件があるんですが。
団   長: まぁまぁ落ち着きたまえ、撮影班のキミ。いったいどうしたと言うんだね。
撮 影 班: 明日、荒川中流付近で「ササブセ漁」の撮影をやります。
団   長: えっ、何?…「サ・サ・ブ・セ」??
撮 影 班: 知らないんですか?「笹伏漁」ですよ。荒川じゃあ有名な伝統漁法ですよ。
団   長: あー、「笹伏漁」ね。知っるよ。知ってますとも。「笹伏」でしょ。
撮 影 班: 本当に知ってるんですか?
団   長: 何を失礼な!私が荒川の伝統漁法を知らないわけがないだろ!いったい私を誰だと思っているんだ!「ササブセ」だろうが「マチブセ」だろうが、私は何だって知っているのだ!!
撮 影 班: 「マチブセ」って漁もあるんですか?
団   長: あ、キミは知らないの?「マチブセ」って有名だよ。
撮 影 班: し、知りませんでした。
団   長: もっと勉強するように…で、用件は何なの?
撮 影 班: そうでした。実は、あしたの「笹伏漁」の撮影を『いけいけ川っぷち団』に取材していただけないかと思いまして。
団   長: あ、そう。取材ね。うーん、どうしようかなぁ…。
撮 影 班: ダメですか?
団   長: 僕らはね、「笹伏漁」なんて飽きるほど見ているんだよね。
撮 影 班: そこを何とか。『いけいけ川っぷち団』で撮影の様子を紹介してもらえませんか?
団   長: そこまで言われたらなぁ…しょうがない、やるか。
撮 影 班: そうですか!ありがとうございます!じゃあ明日、お待ちしております。
(ガチャン)
団   長: あっ…場所は?…もしも?し!どこへ行けば「笹伏漁」やってるの〜?
団長は「笹伏漁」など見たこともない。だから当然漁の場所もわからない。
団   長: とにかく昇ちゃんを派遣しよう…。イヤイヤ、だめだ。昇ちゃんはまだ下流付近にいる…うーん…そうだ!アイツがいる!
団長は思いついた。『いけいけ川っぷち団』の二人目の団員。団長はさっそく連絡を取った。
本名、坪田篤人(ツボタ アツヒト)。通称ツボッチ。今年大阪から上京してきたばかり。
団   長: …とにかく明日、荒川の中流で「笹伏漁」の撮影をしているから取材に行くように。
ツボッチ: 「ササブセ漁」って何ですか?
団   長: 自分で調べるように。
ツボッチ: 団長、知らないんですか?
団   長: な、何を言っているんだねキミは。私は、キミがキミ自身で調べた方がいいと思って、ワザワザそう言っているんだよ。
ツボッチ: ホンマですか?
団   長: ついでに漁の行われる場所も調べるように。
ツボッチ: 場所もわかっていないんですか?
団   長: だからね、私はね、キミのために…。
ツボッチ: ハイハイ、わかりました。ぜーんぶ自分で調べて行ってきます!
ということで、ツボッチは夜通し「笹伏漁」のことを調べるハメになった。
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『いけいけ川っぷち団・虎の穴』で
猛特訓(?)を耐え抜いたツボッチ。

「何でもやったるねん!」

こんなはずでは・・ 〜濁流とともに〜

翌朝9時。ツボッチは見事に荒川中流の撮影班を探し当て合流した。

撮 影 班: 君が『いけいけ川っぷち団』団長?
ツボッチ: ちゃいますがな。団員のツボッチと言いますねん。宜しく頼みます。
撮 影 班: あっそう。しかしキミはまずいところに来たなぁ…。
ツボッチ: え?何がまずいの?
撮 影 班: 実はついさっき、川原の草が伸びすぎていて撮影なんか出来る状態じゃないということが判明した。それにゴミが多い。まったくヒドイもんだ。ということで、まずは草刈りと掃除が必要だということが判明した。
ツボッチ: 判明したって言ったって…漁は、どうなるんですか?
撮 影 班: その後!…たぶん…。
ツボッチ: たぶん?
撮 影 班: とにかく、向こうの岸に渡ります!!

撮影班はズンズンと川の中に入り、20メートル程の流れを横切り、向こう岸に辿り着いた。

撮 影 班: お〜い!ツボッチ早く来―い!
ツボッチ: ボ、僕も渡るんですか?
撮 影 班: 今日の川の流れは速いから流されるなよ―!
ツボッチ: 流される?冗談言わんといてください。
見れば昨日の雨で川は増水していて、流れが激しい。ツボッチはやけくそになって川に突撃した。
ツボッチ: うおぉ〜!
撮 影 班: 行けそうかあ?!
ツボッチ: うぅ〜ん、うぅ〜ん!
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しぶきをあげるロープ
固まるツボッチ
ツボッチは川の真ん中で立ち往生してしまった。一番流れが早い場所にいて、動けそうにない。腰まで水に浸かってしまった身体はいうことをきかない。そばにいた漁師さんが声をかける。
漁  師: そこ行っちゃダメだよ。
ツボッチ: そんなこと言ったってもう来ちゃったんですから!!
漁  師: ちょっと待ってて。今ロープ渡すから。
ツボッチ: ロープがいるほど大変なんですか?!
漁師さんは、瞬く間に川にロープを渡した。ツボッチはそのロープにしがみつき、なんとか向こう岸に辿り着いた。ロープはまるで生き物のように、勢いのある川の流れでしぶきを上げていた。恐るべし自然、恐るべし荒川!しみじみ感じるツボッチであった。
ツボッチ: はぁ〜はぁ〜…。ほんまに、危なかった。
漁  師: 川をナメていたら、本当に大けがするよ。
ツボッチ: ホンマですね。まさか、ここまで足が動かんとはなあ…。
撮 影 班: まあよかったじゃん、助かったんだから。はいっ、では掃除開始!
カマを持たされたツボッチは、撮影班の指示で草刈りを始めた。どんどん、ざくざく草を刈る。…と、そこまではよかった。ところがとんでもない状況がツボッチの前に立ちはだかった。ゴミだ。ゴミゴミゴミ!…空き缶、ビニール、花瓶、人形、カーペット…あらゆるものが岸辺に捨てられていた。
ツボッチ: カーペットなんか誰が捨てんねんやろ!
撮 影 班: もっと増水した時に上流から流れてきたんだろうなあ。まあ、ゴミを捨てる人間が多いのは事実だね。
ツボッチ: 腹立つなあ。荒川を知らん俺が掃除して、荒川を知ってる人達がゴミを捨てる。変な話やなあ…。

そう思いながらも、つぼっちはせっせっと掃除を続けた。川原のゴミを集めると小さな山になった。ツボッチは少し悲しくなった。誰も見ていないときを見計らって、コソコソとゴミを捨てに来る人達。その姿を思い浮かべたのだ。
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こんなところにもゴミが!
撮 影 班: おっ、キレイになったな。ありがとう、ツボッチ!
ツボッチ: まぁ、なんとかやりました。ほんで、撮影は?
撮 影 班: 今日は疲れたから明日にしよう。よし!帰るか!!
ツボッチ: 帰るか!って…また川渡るんでっか?
撮 影 班: 当たり前でしょ。それともここにずっといるつもり?じゃっ、行くよ。
ツボッチ: …。

ツボッチは、またロープにしがみつき、う〜んと唸りながら川を渡った。「笹伏漁」はどんな漁なんだ?撮影はどうなる?…全てが明日になってしまった。

つづく
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【2004年11月16日 04号】


 ついに河口の漁を見せてもらった昇ちゃん。「山に向かって川をさかのぼるぞ!」と決意を新たにした・・・まではよかったが!?

そういえば!?

河口の漁師渡辺さんの話を聞いた昇ちゃんは、さっそく団長に報告の電話を入れた。

昇ちゃん: モシモシ、団長?いやー、うまくいきました。朝陽の中を疾走する漁船・・・もう、最高でした!
団   長: それで味はどうだった?
昇ちゃん: えっ、味って漁船の?
団   長: 漁船は食べられないでしょう。
昇ちゃん: そ、そうですよね。漁船は食べられません・・・アー!!
団   長: ど、どうした?
昇ちゃん: 食べるの忘れてました!
団   長: 漁船を?
昇ちゃん: 漁船は食べられませんってば!・・・そうじゃなくて、川の恵です。
団   長: 第3の鉄則・・・忘れちゃったの?
昇ちゃん: はい。すっかり。
団   長: 忘れちゃったんだ・・・。別にね、私はいいんだ、どうなったってさ・・・。
昇ちゃん: モ、戻りますよ。もう一回行けばいいんでしょ。
団   長: ウン!!じゃあヨロシク!(ガチャン)

ということで、鉄則のことをすっかり忘れていた昇ちゃんは、もう一度新左近川へ戻ることになった。しかしどうやって川の恵みを手に入れたらいいんだ?

3回目の新左近川

11月4日昼の12時。とにかくもう一度渡辺さんに会おうと決めた昇ちゃんはまたまた新左近川にやってきた。もうこれで3回目だ!待つこと1時間。渡辺さんは、だいたいこの時間に獲れた魚を市場に卸しに行くと言っていた。が、現れる気配まったくなし。あきらめて帰ろう・・・。昇ちゃんはトボトボ歩きだした。するとどこからか声が・・・。

「おーい、何してんだ?」
「おーいって、ぼくですか?」
「そうだよ、お前だよ」

隣の船の漁師さんだ。不思議そうにこっちを見ている。昇ちゃんは思い切ってその漁師さんに事情を説明した。すると・・・「なーんだ、じゃあこれ持っていけよ!」と言うではないか!・・・ということであっさり魚をもらえることになった。しかも、今朝とれたてのスズキを3匹も!

「今日は大漁だったし、その大きさじゃ売れねぇんだ」

その気前のいい漁師さんの名は伊藤さん。漁師歴は50年以上という、大ベテラン!16才の時からこの漁協で船に乗ってるという、まさに“荒川の男”だ。伊藤さんの船は渡辺さんの船の三倍はある。5、6人で漁に出かけ、魚群探知機で魚を見つけだし、そこに網を降ろして捕るというハイテク漁法だ。
伊藤さんと話をしているうちに、渡辺さんとある共通点を感じた。二人とも漁をこよなく愛していて、何よりも荒川が好きなんだなぁこれが・・・。おまけに70歳を越えているのにエライ元気なんです、これがまた。

「この歳まで好きなことが出来る人って、なかなかいないよなぁ」

と、妙に感心してしまった昇ちゃんでした。

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これまた運命の出会い!

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舵左が魚群探知機

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スズキgetだ!!

食べる

団長が昇ちゃんに下した指令の内容は「あらかわの河口がどうなっているのかを調査して報告せよ」というものだった。


昇ちゃん: 団長、スズキです!
団   長: おぉ!すごい!すごいぞ!・・・すごいのはいいが、どうやって食べる?頭からかじってみる?
昇ちゃん: 料理しますよ。
団   長: 誰が?
昇ちゃん: ボクが。
団   長: えっ?!昇ちゃん、キミ、料理できるの?
昇ちゃん: ワタクシ、こう見えてもれっきとした“料理人”です!!

何と、昇ちゃんは以前レストランでシェフをやっていた。ということで、手際よくスズキをさばいていく。

団   長: あのー、何を作っていただけるのでしょうか?
昇ちゃん: 何もしない人は黙っといてください!
団   長: は、はい。

30分後。テーブルの上にはスズキの刺身が。

団   長: すごい、昇ちゃん!天才!!
昇ちゃん: どうぞ!
団   長: 昇ちゃんからどうぞ。
昇ちゃん: イエ、団長から。
団   長: イエイエ、昇ちゃんから。
昇ちゃん: 何なんですか!
団   長: イヤ、アノ、大丈夫かな・・・なんてね。生ものだし。
昇ちゃん: 見てわかんないんですか?これは新鮮です。
団   長: そうだよね、新鮮だよね。新鮮、新鮮・・・。
昇ちゃん: あー、団長ビビってる!!
団   長: なーに言ってんの。私は食べますよ。食べますとも。
昇ちゃん: 嫌ならいいんですけれど。僕一人で食べますから。
団   長: 食べます、食べます、絶対食ってやる!!

(と、刺身を口に入れる)

団   長: んっ!?うっ、うまい!!
昇ちゃん: ・・・でしょ?じゃ、僕も・・・うまーい!
団   長: だろっ!!
昇ちゃん: だろって、さっきまでびびってたくせに・・・。あ、団長。
団   長: なに?
昇ちゃん: こんなにおいしいものがあるとお酒が飲みたくなりますねー。
団   長: そうだなー。
昇ちゃん: じゃ、お願いします。僕が料理全部作ったんですから。
団   長: わ、わかりました。買ってきます。・・・で、お金は?
昇ちゃん: 団長のおごりに決まってるじゃないですか!!

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こうみえても元料理人

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スズキの刺身

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塩焼き

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あらだき
昇ちゃんの感想

魚はとにかく美味かった!ぼくは刺身の他に“塩焼き”と“あら炊き”まで作ってしまった。獲れたての荒川の幸は最高だった!団長にお酒もおごってもらえたし・・・なにはともあれ、3番目の鉄則を果たせてよかったです。スズキをくれた伊藤さんに大感謝!!
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【2004年11月09日 03号】


 10月28日早朝。昇ちゃんは雨でさんざんだった前回の探検をなんとかやり遂げようと、再び老漁師渡辺さんの船『はやぶさ丸』に向かう!!

再挑戦!

「いけいけ川っぷち団」の初めての探検は台風で幕を開けた。大雨の中で、荒川河口の漁師渡辺さんの漁に同行。しかし嵐の東京湾は甘くなかった。身体はズブ濡れ。途中でカメラが故障。一緒に行った団長は恐怖で凍りつき、魚もあまり獲れなかった・・・。

さんざんなスタートから一週間。10月28日午前4時45分。我らが昇ちゃんは再び新左近川の船着場にやってきた。見上げれば空には星がたくさん。午前5時。渡辺さんがやってきた。「よろしくお願いしまーす」ということで、河口の漁に再挑戦だ!!

03_01.jpg 今日こそはリベンジだ!
ハゼ狙い

新左近川から荒川に出る水門をくぐりぬけ、河口から東京湾の沖へ…と思ったら船は臨海公園の岸に沿ってドンドン東に進み、なんと隣の江戸川に入ってしまった。
江戸川をさかのぼること約3分。船は網の仕掛け場所に到着した。

昇ちゃん: 何を獲るんですか?
渡辺さん: ハゼ。寒くなったら獲れるんだ。お正月の佃煮用だね。

渡辺さんはせっせと小さな目の網をたぐり上げた。だがしかし、網にはまったく何もかかってこない。・・・結局ハゼは一匹も獲れなかった。渡辺さんは無言のままエンジンをかけ、再び東京湾へ向かう。あたりは明るくなってきた。
03_02.jpg 本日、快晴
スズキ狙い

仕掛けてある網を次々と上げていく。大きなスズキが何匹もかかっている。ボラも多い。

昇ちゃん: 大漁ですね。
渡辺さん: 全然。
昇ちゃん: ダメなんですか?
渡辺さん: いつもはもっと獲れる。こんなのは「大漁」と言わねぇの!
昇ちゃん: ハ、ハイ。
渡辺さん: タイリョウじゃねぇから本日シュウリョウ。
昇ちゃん: そんなダジャレ言ってないで・・・。

大漁じゃなくても渡辺さんは元気だった。
とても73歳とは思えない。朝日が昇ってきて荒川を赤く染める。『はやぶさ丸』は帰途についた。
03_03.jpg スズキがかかっている
03_04.jpg で、でかい!!
03_05.jpg 朝日がきれい

渡辺さんインタビュー

船着場に戻って網の手入れをする渡辺さん。昇ちゃんは話しを聞くことにした。

■網を仕掛ける場所
昇ちゃん: 網を仕掛ける場所はどうやって決めるんですか?
渡辺さん: 勘だね。
昇ちゃん: またまた・・・。何か理由あるでしょ?
渡辺さん: うーん。潮の満ち干と流れ。天候。水の具合。そういうのを見るけどね。
昇ちゃん: やっぱりちゃんと理由があるんじゃないですか。
渡辺さん: でも決めるときはポンと決める。
昇ちゃん: ポン・・・ですか?
03_06.jpg 漁が好きなんだなー
渡辺さん: そう。最後はポンと決めるから、やっぱり「勘」なんだな。
昇ちゃん: ・・・っていうことはハズレもあるわけですね。
渡辺さん: 当たり前だろ。漁なんだから。獲れたり獲れなかったり色々あるさ。
■水の具合
昇ちゃん: さっき理由の一つに上がっていた「水の具合」っていうのは?
渡辺さん: 「水の汚れ具合」ってことだね。
昇ちゃん: 汚れ具合?
渡辺さん: 例えばこの一週間ずっと大雨だっただろう。だから川の水が汚れている。上流から色んな物が流れてくるからね。そうすると魚はどこかに逃げちゃうんだ。それで水がきれいになったら戻ってくる。大雨の後は水が落ち着くまでに何日もかかるから、もうしばらく大漁は無いね。
昇ちゃん: そうか。それまでは我慢ってわけですね。
渡辺さん: 仕方ないね。・・・でも20年くらい前までは「仕方ない」じゃ済まなかったよ。
昇ちゃん: どういうことですか?
渡辺さん: 俺がこどもの頃は、ノリ、シジミ、ハゼ、スズキって季節毎に色んなものが獲れた。でも昭和30年頃から川がえらく汚れてしまって、一時は何にも獲れなくなった。始めにノリがだめになって、次にシジミがだめになって・・・って具合に。その時は俺も陸に上がって別の仕事をやったよ。
昇ちゃん: そうだったんですか。川の水がきれいかどうか・・・これが重要な問題なんですね。
渡辺さん: ところでさ「水がきれい」ってどういうことか知ってる?
昇ちゃん: きれいということは・・・汚くないというか・・・。すきとおっているってことでは?
渡辺さん: 水にちょうどいい具合に栄養が含まれているってことなんだな。栄養が少なけりゃもちろん魚は生きていけない。でも多すぎてもだめなんだよ。植物プランクトンなどがもの凄く増えて、こういうのもまた魚が生きづらい環境になるんだ。“ちょうどいい”が一番さ。
昇ちゃん: ・・・そんなのどうやって調整すればいいんだろう?
■山の存在
渡辺さん: 調整なんかできないさ。
昇ちゃん: なんだ、できないんだ・・・。
渡辺さん: でも一つだけはっきりしてる。大事なのは「山」ってことだ。
昇ちゃん: 「山」?
渡辺さん: 川の始まりは山ん中だろ?
昇ちゃん: ハイ。・・・イヤ、山がどうなってりゃ・・・。
渡辺さん: ちゃんとしてればいい。
昇ちゃん: 「ちゃんと」って?
03_07.jpg 鶏にエサをやる渡辺さん
渡辺さん: 知らん。
昇ちゃん: 知らないんですか?
渡辺さん: でも山が大事なの。昔からそういうことになってるの。
■戻ってきた魚
昇ちゃん: よくわかりませんが、川と渡辺さんの漁には山の影響が大きいってことですね。
渡辺さん: まぁ、そういうことかな。とにかく、20年くらい前からまた川がきれいになってきたわけだ。きれいになったから、どこかに行ってた魚が戻ってきた。ついでに俺も戻ってきたってわけさ。
昇ちゃん: 「ついで」ってことないでしょう。
渡辺さん: やっぱり漁師だから漁やってねぇと具合悪いんだな。
昇ちゃん: 今は楽しい・・・。
渡辺さん: そりゃ楽しいよ。台風直撃っていう時以外は毎日船に乗ってる。だからこの前も出かけただろ。正月だって休まないよ。
昇ちゃん: 正月もですか?
渡辺さん: うん。元旦は船の上で初日の出を見る。美しいもんだぞ。

渡辺さんは漁師の仕事を愛し、当たり前のように毎日船に乗る。だから元気なのかも知れない。そんな渡辺さんから重要な話しを聞いた。山の存在だ。
『河口から山に向かって…』
昇ちゃんは決めた。「いけいけ川っぷち団」は川をさかのぼる。荒川が始まる山に辿り着くまで探検を続けるのだ!!
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【2004年11月03日 02号】

近づく台風。降り止まない雨。不安がいっぱいの中「いけいけ川っぷち団」を乗せた漁船が遂に出発する
どしゃ降り
10月20日午前4時45分。どしゃ降りの雨の中、昇ちゃんは荒川の河口近くに注ぐ川、新左近川の船着場にいた。何故か団長も一緒だ。昇ちゃんが心配だからと着いてきたのだ。
「台風だろうがなんだろうが俺は網を上げに行くの!だから一緒に来い!!」
昨日、漁師の渡辺さんは力強く言った。その言葉に引きずられて二人はやって来た。
が、接近中の台風のせいでもの凄い雨。しかもあたりは真っ暗。渡辺さんを待っていると突然団長が大きな声を上げた。

団   長: 大変だ!
昇ちゃん: なんですか。びっくりするじゃないですか。
団   長: マズイ。
昇ちゃん: 何が?
団   長: 考えてみろ。この大雨の水がどんどん船に溜まったらどうなる?もしかしたら船は沈んでしまうんじゃないだろうか?
昇ちゃん: そんなわけないでしょう。
団   長: 波もあるし。雨がもっとひどくなるって言ってたし・・・。
昇ちゃん: 誰がですか?
団   長: 天気予報。
昇ちゃん: アー!団長、怖いんでしょう?
団   長: な、何言ってるの。私は行きますよ、雨だろうが何だろうが・・・。

午前5時。渡辺さんがのんびりと自転車を漕いで現われた。雨も気にしていない様子。そこにいきなり団長が質問。

団   長: あの、雨が船に・・・。
渡辺さん: オハヨウ!行くぞ!!
団   長: オ、オハヨウございます。行きましょう・・・イヤ、アノ、行くことは行きます。行くんですがひとつ気になることが・・・。
渡辺さん: 何だよ。
団   長: あのですね、この大雨とか、川の水とか、海水がですね、一度に船に溜まっちゃったらマズイと思うんですね。
渡辺さん: 何で?
団   長: 船が沈むのではないかと。
渡辺さん: どうして沈むの?
団   長: だから水が溜まって。
渡辺さん: 沈むわけないだろ。ちゃんと排水しているんだから。
団   長: そ、そうですよね。排水するんですよね。
渡辺さん: 行くぞ!レッツ・ゴー!!

とうわけで渡辺さんの小さな漁船『はやぶさ丸』は、昇ちゃんと団長を乗せ雨の中を出港した。


寒いっス!

朝から元気な渡辺さん
ビビり団長(泳げない)

大問題発生

水門を出て荒川を下ること3分。河口の大きな橋をくぐり、船は東京湾に出た。そして一直線に網を仕掛けた場所を目指す。昇ちゃんは写真を撮った。
大雨の中、平然と船を操る渡辺さん。そして「大丈夫ですよね、大丈夫ですよね」と独り言を繰り返す団長…。

ところがここで大問題が起こった。
シャッターが動かない!カメラが雨に濡れて壊れたのだ!!

雨と風で大揺れの船の上。昇ちゃんは焦る。団長はビビって動かない。
ただ一人渡辺さんだけが、せっせと網を上げ続けた―。


荒海の中を平然と操る渡辺さん

雨が憎い

・・・漁は終わってしまった。
スズキ三匹、カニとコイが数匹・・・魚はほとんどかかっていなかった。写真もほとんど撮れなかった。
「雨で魚が逃げちゃったなぁ」
新左近川に戻った渡辺さんがつぶやいた。
恐怖から解放されてボーッとしていた団長が思い出したように口を開いた。
「…昇ちゃん、安心しろ。成果はあったぞ。我々は鉄則を二つ守った。"誰かに会うこと""川に触ること"だ。我々は渡辺さんに出会ったし、荒川河口の水に触った…いや、水をかぶった。もうビショビショだ!」

昇ちゃんはカメラを点検していた。するとカシャっと音がして、壊れていたシャッターが治ってしまった。昇ちゃんはカメラを握り締め渡辺さんに言った。
「もう一度船に乗せてください。今度は晴れた日に!」
昇ちゃんは悔しかったのだ。

・・・というわけで「いけいけ川っぷち団」は、もう一度『はやぶさ丸』に乗せてもらうことになった・・・。


魚逃げちゃったなぁ

こんなに大きなコイです