渡辺さんインタビュー
船着場に戻って網の手入れをする渡辺さん。昇ちゃんは話しを聞くことにした。
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■網を仕掛ける場所
昇ちゃん: |
網を仕掛ける場所はどうやって決めるんですか? |
渡辺さん: |
勘だね。 |
昇ちゃん: |
またまた・・・。何か理由あるでしょ? |
渡辺さん: |
うーん。潮の満ち干と流れ。天候。水の具合。そういうのを見るけどね。 |
昇ちゃん: |
やっぱりちゃんと理由があるんじゃないですか。 |
渡辺さん: |
でも決めるときはポンと決める。 |
昇ちゃん: |
ポン・・・ですか? |
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漁が好きなんだなー |
渡辺さん: |
そう。最後はポンと決めるから、やっぱり「勘」なんだな。 |
昇ちゃん: |
・・・っていうことはハズレもあるわけですね。 |
渡辺さん: |
当たり前だろ。漁なんだから。獲れたり獲れなかったり色々あるさ。 |
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■水の具合
昇ちゃん: |
さっき理由の一つに上がっていた「水の具合」っていうのは? |
渡辺さん: |
「水の汚れ具合」ってことだね。 |
昇ちゃん: |
汚れ具合? |
渡辺さん: |
例えばこの一週間ずっと大雨だっただろう。だから川の水が汚れている。上流から色んな物が流れてくるからね。そうすると魚はどこかに逃げちゃうんだ。それで水がきれいになったら戻ってくる。大雨の後は水が落ち着くまでに何日もかかるから、もうしばらく大漁は無いね。 |
昇ちゃん: |
そうか。それまでは我慢ってわけですね。 |
渡辺さん: |
仕方ないね。・・・でも20年くらい前までは「仕方ない」じゃ済まなかったよ。 |
昇ちゃん: |
どういうことですか? |
渡辺さん: |
俺がこどもの頃は、ノリ、シジミ、ハゼ、スズキって季節毎に色んなものが獲れた。でも昭和30年頃から川がえらく汚れてしまって、一時は何にも獲れなくなった。始めにノリがだめになって、次にシジミがだめになって・・・って具合に。その時は俺も陸に上がって別の仕事をやったよ。 |
昇ちゃん: |
そうだったんですか。川の水がきれいかどうか・・・これが重要な問題なんですね。 |
渡辺さん: |
ところでさ「水がきれい」ってどういうことか知ってる? |
昇ちゃん: |
きれいということは・・・汚くないというか・・・。すきとおっているってことでは? |
渡辺さん: |
水にちょうどいい具合に栄養が含まれているってことなんだな。栄養が少なけりゃもちろん魚は生きていけない。でも多すぎてもだめなんだよ。植物プランクトンなどがもの凄く増えて、こういうのもまた魚が生きづらい環境になるんだ。“ちょうどいい”が一番さ。 |
昇ちゃん: |
・・・そんなのどうやって調整すればいいんだろう? |
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■山の存在
渡辺さん: |
調整なんかできないさ。 |
昇ちゃん: |
なんだ、できないんだ・・・。 |
渡辺さん: |
でも一つだけはっきりしてる。大事なのは「山」ってことだ。 |
昇ちゃん: |
「山」? |
渡辺さん: |
川の始まりは山ん中だろ? |
昇ちゃん: |
ハイ。・・・イヤ、山がどうなってりゃ・・・。 |
渡辺さん: |
ちゃんとしてればいい。 |
昇ちゃん: |
「ちゃんと」って? |
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鶏にエサをやる渡辺さん |
渡辺さん: |
知らん。 |
昇ちゃん: |
知らないんですか? |
渡辺さん: |
でも山が大事なの。昔からそういうことになってるの。 |
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■戻ってきた魚
昇ちゃん: |
よくわかりませんが、川と渡辺さんの漁には山の影響が大きいってことですね。 |
渡辺さん: |
まぁ、そういうことかな。とにかく、20年くらい前からまた川がきれいになってきたわけだ。きれいになったから、どこかに行ってた魚が戻ってきた。ついでに俺も戻ってきたってわけさ。 |
昇ちゃん: |
「ついで」ってことないでしょう。 |
渡辺さん: |
やっぱり漁師だから漁やってねぇと具合悪いんだな。 |
昇ちゃん: |
今は楽しい・・・。 |
渡辺さん: |
そりゃ楽しいよ。台風直撃っていう時以外は毎日船に乗ってる。だからこの前も出かけただろ。正月だって休まないよ。 |
昇ちゃん: |
正月もですか? |
渡辺さん: |
うん。元旦は船の上で初日の出を見る。美しいもんだぞ。 |
渡辺さんは漁師の仕事を愛し、当たり前のように毎日船に乗る。だから元気なのかも知れない。そんな渡辺さんから重要な話しを聞いた。山の存在だ。
『河口から山に向かって…』
昇ちゃんは決めた。「いけいけ川っぷち団」は川をさかのぼる。荒川が始まる山に辿り着くまで探検を続けるのだ!! |